母 84歳になる私の母は、3年前に脳梗塞で倒れた・・・言葉が出なくなり、歩行が困難になりかけていたが、この人はやはり父が言っていた通り「只者」ではなかった。 医者が驚くほど、回復が早かった。 リハビリの開始を許可されてからの母は、リハビリのやりすぎで倒れるのではないかというくらいに、顔を顰めながらも、絶えず体を動かし、足を動かし、指を動かし、今では自分の身の回りの事は勿論の事、家事を僅かではあるがこなしている。 だから反面、きつい人ではある 父は定年を迎えると割りと自由に暮らしていたが、母は、倒れるまで仕事をしていた。自分の仕事を芯から愛していたのだと思う。 その母が結婚前の私に「(若いときの)苦労は買ってでもしろ・・と言うけれど、あれは嘘。 しなくても良い苦労は、しなさんな。」と言った。 母にしてみれば、もっと楽な結婚をしてもらいたかったのだろう。 そうだね、お母さん 今なら解かる。 母は自分の母を10歳の時に亡くしている。 二人の兄がいたが、跡継ぎだった叔父は、財産を全て使い果たし母に借金を遺し、妻ではない人のところで倒れそのまま亡くなった。 父の母はお大尽の奥方だったが、これまたきつい人で( 孫の私には良い祖母だったが )仕事を持った母に悉く辛くあたったらしい。 連休に父の7回忌のために実家を訪れ、 二人で母のベッドに座り、色々と話をしたが、 「 おばあちゃんがきつかったから、お父さんは、家を出よう・・・と言ったことがあったんよ 」 『 でもお父さん一人息子やない 』 「 お父さんの方が我慢できんやったみたいやね。 私がかわいそうや・・・ゆうて、」 「 でも、私は母親無しで育ったみたいなもんやからね、 お父さんに、親を捨てるような真似させられへんでしょ 」 「 お前が出ないのなら、俺が出る・・・まで言い出して・・・」 祖母、父、母の葛藤は今まで聞かされたことは無かった。 が、母はなんとなく嬉しそうにその話を私にした。 そうだね、お母さん、その気持解かる。 息子は根底では、母親を裏切ったり、捨てたり出来ない。 でも女房に、お前が一番だよって 態度で示してくれたら、それでいいんだもんね。 お互いに良い連れ合いを持ったね・・・ 親子でなんだか、気持が悪いねぇ 父が亡くなってから、母と父の話をする度に、母が年老いていくのを実感する。 もう少し、性のキツイお母さんで居てくれてもいいんよ。 ○子(孫)の結婚式まで、元気でね。 2005/09/20 23:16
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